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「ここは地球だったんだあ」
と叫んでいる奴がいるので驚いた。ここは地球ではないからだ。しかし、こんなことでいちいち驚いてはいられない。この星ではへんてこが当り前なのだ。
とにかく、空港の作りが恐ろしくへんてこで、おまけに見取り図までがへんてこなので、赴任早々迷ってしまった。比較的へんてこでない人がいたので出口を訊いてみる。
「あの、すいません。出口はどこですか?」
「だから、さっき云ったでしょ?」
しまった。こいつもへんてこだ。外見で判断してはいけないんだ。とりあえず陳謝して、今度は試みに、かなりへんてこな人に訊いてみる。レッツ・トライ。
「あの、すいません。出口はどこですか?」
「私もずっと探しているんですよ」
あら意外。割りとマトモだ。
「でも、だいたいの見当はついています」
「えっ?。それはどっちですか?」
「教えてくれますか?」
「は?」
「だから、それを教えてくれますか?」
「いや、私が訊いているんですけど」
「ならば、一緒に教えましょう」
「はあ?」
「そして、緑を育てましょう」
「さいならあ」
しまったしまった。やっぱりへんてこだ。じゃあ、今度は中ぐらいの人に訊いてみよう。何て答えるかな?。だんだん楽しくなってきたゾ。
「あの、すいません」
「スプーキーがね、ひとの足もと見やがって扁桃腺なの」
あ、こりゃ全然ダメだ。会話にさえなっていない。
「岸田さあん、こっちこっちい」
声がするので顔を向けると、おおっ、支社長の広中さんぢゃないか。
「広中さあん」
「すいません、遅れちゃって。なにしろ突然、へんてこパレード始めやがって」
「へんてこパレード?」
「心細かったでしょ?」
「心細いどころじゃないよ。会話にならないんだもん」
「いやあ、すいませんでした」
「これならまだ言葉が通じない方がマシだよ」
「身ぶり手ぶりで判りますからね」
「こいつら、なんで日本語なの?」
「理由なんかないみたいですよ」
へんてこパレードはまだ続いているようだ。見てみたい気もしたが「今日のはそれほどへんてこではない」とのことで、とりあえずホテルにチェックインすることにした。
「ホテルはマトモなの?」
「比較的マトモですよ」
「比較的?」
「下町あたりに比べたら全然マトモですよ」
「いや、そりゃそうだろうけど、お湯ひねったら水が出て来た、とかはないよね?」
「その程度なら、あります」
「あるのかよ!」
「だから、表示を信用しちゃダメってことですよ。必ず確認しないと」
「…ねえ、なんでこいつら、へんてこなの?」
「理由なんかないみたいですよ」
「…広中さん、もう慣れた?」
「ぜんっぜん慣れません」
この星にもう5年もいる広中さんが慣れないのだ。私はこれから、いったいどうなってしまうのだろうか?。
広中さんの運転はかなりうまい。右車線か左車線か定まっていないこの星で、無事故でホテルに辿り着いた。そのホテルの佇まいがどう見ても遊園地で、
「これで比較的マトモなのかよ…」
カバンを部屋まで運んだボーイは、私にチップをくれた。
(2005年5月28日)
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