フレデリック・ベイカー
Frederick Baker (イギリス)



スウィート・ファニー・アダムス

 英国には「Sweet Fanny Adams」というスラングがある。「nothing at all」の意味で、その語源となったのが本件である。

 1867年8月24日午後7時頃、ハンプシャーの田園地帯を捜索していた村人がファニー・アダムス(8)の哀れな亡骸を発見した。頭は切り離され、畑に立つ棒の上に乗せられていた。両目を抉ぐられ、片耳を削がれている。一方、胴体はというと、胸を開かれ、心臓が取り出されていた。片手と片足、下腹部も切り取られている。ほとんどバラバラである。こうしたパーツは方々にばら蒔かれ、両目は近くを流れるウェイ川に投げ込まれていた。

 その日、可愛いファニー・アダムスは姉のリジーと友達のミリー・ワーナーの3人で遊んでいた。そこにやって来たのが法律事務所の事務員、フレデリック・ベイカー(29)である。彼は少女たちがブルーベリーを摘むのを手伝うと、リジーとミリーに小銭を渡して「お菓子を買ておいで」と微笑みかけた。2人が駄菓子屋から帰って来ると、ファニーと「やさしいおじちゃん」はいなくなっていた。
 ベイカーはファニーを畑に連れ込むと、石で殴って殺害したのだ。彼女の下腹部はとうとう見つからなかったので、強姦したかどうかは不明である。しかし、遺体の状況から性的殺人であることは明らかだ。

 犯行後、彼は日記にこのように記している。
「Killed a young girl - it was fine and hot」
 これが決定的な証拠となり、ベイカーは絞首刑に処された。

 2年後の1869年、英国海軍で食料としてマトンの缶詰が導入された。これがトンデモない代物で、あまりの不味さに、
「この肉はファニー・アダムスの見つからなかった部分に違いない」
 などというブラックジョークが飛び出した。以来、マトンのことを、転じて「価値のないもの」を「可愛いファニー・アダムス」と呼ぶようになったという。そして、今日でも「なんにもない」という意味で使われている。
 以上、役に立たない豆知識、おわり。


参考文献

『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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