ボニー&クライド
Bonnie Parker & Clyde Barrow (アメリカ)



ボニー&クライド

『俺たちに明日はない』でお馴染みのクライド・バローボニー・パーカーの2人組は、30年代のアメリカで暴れ回った実在の強盗カップルである。

 テキサス州の貧しい農家に生まれたクライドは、1932年3月、ダラスでウェイトレスをしていたボニーと運命的な出会いを果たし、カフェや銀行、ガソリンスタンドを襲う強盗稼業を始めた。強奪した金額は高が知れていたが、その手口は荒々しく、流血が絶えなかった。
 やがて、クライドの兄貴バックとその妻のブランチを加えて4人組になった一味は、強奪を繰り返しながら南西部を駆け抜けた。その犯行は常に新聞の一面を飾り、都市部に住む人々にとっては、いわば「反逆のスター」だった。
 しかし、南西部に住む人々にとっては極めて迷惑な連中だったし、その実像はクライドがゲイ、ボニーは色情狂と、あまりカッコのいいものではない。彼らに同行していたW・D・ジョーンズによれば、晩になるとクライドとボニーの双方から夜這いをかけられたそうである。

 1933年7月、警察との度重なる銃撃戦の結果、バックは射殺され、ブランチは負傷して逮捕された。ボニーとクライドは辛うじて逃げ延びたが、1934年5月23日、遂に最期の時が来た。待ち伏せされた2人は四方を警官隊に囲まれ、銃弾の雨を浴びたのである。
 ボニーが残した一遍の詩が、妙に心に残る。

 住み慣れた家を出て 町へ行った
 その目まぐるしい喧噪の中で遊ぶために
 無情なところとも知らずに
 町は田舎の少女を取り込んでいく

 少女は甲斐性ある男に惚れ込んだ
 チャイからやってきた殺し屋
 死に物狂いで愛した男
 男のためなら死んでもいい

 彼らは破滅することを知りながら、敢えて破滅へと突き進んで行った。それを美学と受け止める者はあとを絶たないが、彼らが13人もの罪のない人々を殺した殺人者であることも忘れてはならない。


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
週刊マーダー・ケースブック74(ディアゴスティーニ)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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