ハーマン・ドレンス
Herman Drenth
a.k.a. Harry Powers (アメリカ)


 

 ハリー・パワーズの偽名でも知られるハーマン・ドレンスは「アメリカの青髭」と呼ばれている。典型的な「ロンリー・ハート・キラー」で、孤独な中年女性に新聞広告を通じて接近し、ウエストバージニア州クラークスバーグの我が家へと言葉巧みに誘い込み、手製のガス室へと送り込んだ。犠牲者の数は50人と云われているが、その正確な数は判らない。

 ドレンスの犯行が発覚したのは、1931年にアスタ・エイチャーという未亡人を手に掛けた時のことである。彼女は2人の娘と1人の息子を友人に預けて、コーネリアス・ピアソンと名乗る男と共にハネムーンに出掛けたっきり、二度と帰って来なかった。やがて子供たちを引き取りに来た「ピアソン」は、預け先の友人に謝礼の小切手を手渡した。ところが、その小切手が不渡りとなり、子供たちの消息も途絶えた。不審に思った友人は警察に届け出た。

 エイチャー宅を捜索した警察は「ピアソン」から送られた手紙を発見した。住所はウエストバージニア州クラークスバーグ郵便局の私書箱とある。そこで郵便局に張り込み、郵便物を取りに現れた「ピアソン」こと本名ハーマン・ドレンスを逮捕した。

 取調べにおいてドレンスは、エイチャー夫人は私を棄てて、他の男と駆け落ちしてしまったのです、およよよと大袈裟に泣いて見せたが、捜査官は騙されない。間もなくドレンス宅の庭からエイチャー夫人と3人の子供、そして別件のレムキ夫人の遺体が発掘されて、ホンボシであることが確定した。その上、部屋からは女ものの装飾品が大量に押収された。とても1人のものとは思えない。余罪を追求すると、ドレンスは居直って、

「もう5人殺したことは認めているじゃないですか。他に50人殺していたところで大した違いはないでしょう」

 結局、その他の犠牲者は見つからなかった。ドレンスは5件の殺人で有罪となり、1932年3月18日に絞首刑に処された。

 なお、ディヴィス・グラッブの小説『狩人の夜』に登場する偽伝道師の連続殺人犯、ハリー・パウエルは「ハリー・パワーズ」ことハーマン・ドレンスをモデルにしている。映画版ではロバート・ミッチャムが演じた、右手には「LOVE」、左手には「HATE」の刺青のあの殺人鬼である。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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