ハーヴェイ・グラットマン
Harvey Murray Glatman (アメリカ)



ハーヴェイ・グラットマン


グラットマンが撮影したボンデージ写真

 オリヴァー・サイリャックスは著書『世界犯罪百科全書』の中で、ハーヴェイ・グラットマンを「強姦殺人犯の中でもたぶん最も容姿の醜い男」と評している。そんなことはないと思うが、盛り上がった頬と、花瓶の取っ手のように大きな耳はたしかに特徴的で、犯罪者には向いていない。これではすぐに面が割れてしまう。だから、彼は被害者を殺さなければならなかった。彼が個性的な面構えでなかったならば、単なる強姦犯で終わったかも知れない。

 グラットマンがオナニーを始めたのは12歳の頃からだという。平均的な年齢だと思うが、その方法は一風変わっていた。最中に自分の首を絞めるのである。某音楽家がドアの取っ手に括ったタオルで縊死した時も、首を絞めながらオナニーしていたのではないかと噂されたが、こうすると酸欠に陥ってイイものなのだそうだ。それはともかく、12歳にしてマニアックな道を歩み始めたグラットマンは、17歳の時に少女に対する強制猥褻と強盗の罪で5年間服役し、出所後にベティ・ペイジのボンデージ写真と出会って衝撃を受ける。
「俺もこういう写真を撮ってみたい!」
 カメラを買い込んだグラットマンは早速、獲物を探し始めた。

 1957年8月1日、ロサンゼルス在住のモデル、ジュディ・アン・ダルは「ジョニー・グリン」と名乗る男の訪問を受けた。
「僕はパルプ雑誌のカメラマンなんだけど、今、モデルを探している。50ドルで表紙の仕事をしてみないかい?」
 彼女は快諾し、2日後にスタジオ(=単なるアパート)に連れて行かれて、手足を縛られ猿轡を噛まされて、ボンデージ写真を撮影された。
 この時、29歳のグラットマンはまだ童貞だった。理性を失った彼は、彼女の服を引き裂き、銃を頭に押しつけて、続けざまに2度強姦した。彼女は泣きながら、早く帰してと懇願した。
「あなたのことは絶対に誰にも云わないから」
 いや、そんなことはない。彼女は云うに決まっている。逮捕を怖れたグラットマンは、彼女を車に乗せて郊外の砂漠へと走り、そこで何枚か写真を撮った後、絞殺して砂中に埋めた。
 帰宅したグラットマンは自己嫌悪に陥り、逮捕を覚悟した。ところが、警察はいつまで経っても現れない。次第に自責の念も薄れ始め、撮った写真を現像した。
「うん。なかなかいい写真じゃないか」
 写真を引き伸ばして部屋に張り、そして、新たな獲物を探し始めた。

 1958年 3月 8日 シャーリー・ブリッジフォード
       7月23日 ルース・リタ・メルカード

 このまま何事もなければ、彼の犯行はエスカレートし、犠牲者は何十人にも及んだことだろう。ところが、4人目の犠牲者ロレイン・ヴィジルは気丈だった。10月27日、砂漠に連れ出されて銃を突きつけられたロレインは、果敢にもその銃に掴みかかった。慌てたグラットマンは発砲し、弾はロレインの太腿に命中したが、彼女は怯まなかった。手首をねじ上げて銃を奪い取ると、銃口を彼に向けた。やがて幸運にもハイウェイパトロールが通りかかった。かくして、この変態野郎は御用となった。

 グラットマンは「つい出来心で」と弁明したが、彼のアパートを捜索した警察は呆れ返った。ボンデージ写真が部屋中に所狭しと張られていたのだ。中には明らかに死後の写真もあった。出来心なわけあるかい。常習犯やんけ。
 そんなわけで死刑を宣告されたグラットマンは、1959年9月18日、ガス室で処刑された。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『愛欲と殺人』マイク・ジェイムズ著(扶桑社)
『平気で人を殺す人たち』ブライアン・キング著(イースト・プレス)
『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房)


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