ジュリアン・ナイト
Julian Knight (オーストラリア)



ジュリアン・ナイト(右)


バカに銃を持たせてはいけない

 ジュリアン・ナイト(19)は、一言で云えば戦争バカである。戦争がしたくて陸軍士官学校に入学した。夢は戦場で何十人と殺した後に、自らも華々しく散ることだ。ところが、その実際は口先だけの弱虫だった。同僚からはいぢめられ、腕力ではかなわないのでナイフで刺して退学となった。恋人にはフラれるわ、家からは追い出されるわと不幸が相次ぎ、生活費をこさえるために売ろうとしていた車が故障したことでプツリと切れて自棄のやん八やいゆえよ。
 どうせ死ぬなら戦場で死んでやろう。
 散弾銃と2挺のライフル、そして200発の銃弾で武装すると、メルボルンのホドル・ストリートを戦場に見立ててウォーゲームを始めたのである。1987年8月9日のことである。

 38分で200発、すべての銃弾を使い切った成果は死者7人、負傷者19人。駆けつけた警官隊に取り囲まれたジュリアンは、

「撃つな! 撃たないでくれ!」

 と、呆気なく降参した。おい、お前、戦場で散るのが夢だったんとちゃうんかい?

「本当は自殺するつもりでした。自殺するための最後の弾丸をポケットに入れていたんです。でも、なくしちゃいました。それで、包囲された兵士の通例として、僕も降伏したんです。本当です」

 などと云い訳をするこのバカは、反省の言葉をおくびにも出さず、責任をさまざまなものになすりつけた。曰く、退学処分になったから。曰く、彼女にフラれたから。曰く、どうせ養子だから。曰く、母乳で育てられなかったから。まったく口先だけの男である。しまいにゃ軍に責任を転嫁する始末。

「彼らが僕に人殺しを教えたんです。僕はそれを実行しただけなんですよ」

 こういうバカには死刑が妥当だが、オーストラリアでは2年前に死刑を全廃してしまっていた。
 早まったなあ。
 そういうわけで、このバカは終身刑となり、税金で暮らしている。


参考文献

『世界殺人者名鑑』タイムライフ編(同朋舎出版)
週刊マーダー・ケースブック71(ディアゴスティーニ)


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