ブレンダ・スペンサー
Brenda Spencer (アメリカ)



ブレンダ・スペンサー

『アメリカン・バイオレンス』という映画がある。犯罪大国アメリカの実情を描いたドキュメンタリーで、数々の理不尽な事件が取り上げられている。中でも特に理解に苦しむのが、当館でも紹介済みのロバート・スミスと、このブレンダ・スペンサーの事件である。グレているわけではない一見普通の高校生が或る日突然、大した理由もなく大量殺人に挑んだのだ。
「アメリカっちゅうのは恐ろしか国ばい。狂っとるばい」
 などと他人事のように驚いていたが、最近では他人事ではなくなってきた。我が国もアメリカ並みに狂ってきたのである。美しい国にっぽんは今やキチガイ大国でもあるのだ。

 1979年1月29日、カリフォルニア州サンディエゴでの出来事である。その日は月曜日だった。月曜日はイヤなものだ。休みが終わり学校が始まる。くだらない授業を受けなければならない。それでもクリーブランド小学校の生徒たちは、かじかむ手を擦りながら学校へと向った。校長先生と守衛さんが門を開けて生徒たちを出迎えた。そこに銃声が鳴り響いた。
 ライフルの発砲は20分間も続いたという。校長先生と守衛さんは息絶え、9人の子供たちが重傷を負った。犯人は向いのお姉さんだ。お姉さんはひとしきり撃ち終えると、飽きたかのように自宅へと戻って行った。
 なんだなんだ? いったいなにがあったんだ?
 回復不能なトラウマを負った子供たちには、お姉さんのご乱心のワケがさっぱり判らなかった。おまわりさんにだって判らなかったし、現場に急行した記者たちにも判らなかった。自宅に篭城したお姉さんに交渉人は訊ねた。

「どうして撃ったんだ?」
 すると、お姉さんは答えた。
「理由なんてないわ。ただ退屈だっただけ。月曜日は嫌いなのよ」
(I just started shooting, that's it. I just did it for the fun of it. I just don't like mondays)

 月曜日が嫌いだから撃った。なかなか文学的な理由である。この言葉は各界に衝撃を及ぼした。目敏いボブ・ゲルドフは早速『I Don't Like Mondays』という曲を書き、世間の顰蹙を買いながらも世界中でヒットさせている。

 なお、当時16歳のブレンダ・スペンサーは、2件の殺人とその他もろもろの罪で有罪となり、25年以上の終身刑が宣告された。


参考文献

『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG (HEADLINE)


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