テッド・ガーリック
Ted Garlick (イギリス)



テッド・ガーリックと愛犬のカーリー

 1962年10月12日夜、16歳のキャロル・ホワイトが、ヒースロー空港近くの電話ボックスからボーイフレンドに電話を掛けたのを最後に行方不明となった。電話機の上には彼女のハンドバッグが置かれたままだった。
 翌日、テッド・ガーリックなる男から通報があった。女の遺体を発見したというのだ。
「自宅付近を散歩していると、飼い犬がいきなり野原に向かって走り出しました。おいおい、何処に行くんだと後を追いかけた私は、それに蹴つまずいたんです」
 蹴つまずいた「それ」とは、刃物でめった刺しにされたキャロル・ホワイトの遺体だった。

 まるで「ここ掘れワンワン」のような発見劇だが、そんな「偶然の発見者」たるテッド・ガーリックが容疑者として浮上したのは、その忌まわしき過去ゆえである。彼は以前、妻とガス中毒による心中を図り、一人だけ生き残ってしまっていたのだ。妻殺しの容疑で裁かれたものの無罪放免。この時、義理の母は予言した。
「あいつはまた人を殺すわ!」

 解剖の結果、死亡時刻は午後9時から9時30分までの間と推定された。そして、同じ日の午後10時頃、ガーリックが現場付近から自宅方向に歩いているのを目撃されていた。この事実を突きつけられたガーリックはやがて自供。凶器のナイフも差し出した。
 動機は些細な口喧嘩だという。なんでも「電話ボックスの脇に佇んでいた彼女と卑猥な話をしていたら、インポとなじられたので、カッとなって刺し殺した」とのことだった。
 かくして有罪となったガーリックは、終身刑を宣告された。

 と、ここまでが参考文献に基づく事のあらましだが、不明な点、不可解な点が多い。
「被害者はどうして電話ボックスの脇に佇んでいたのか?」
「どうして卑猥な話をするのか?」
「見知らぬ女にインポとなじられたぐらいでめった刺しにするだろうか?」
「そもそも、どうしてナイフを持っていたのか?」
「彼女が電話を掛けたボーイフレンドとはガーリックなのではないか?」
「彼が本当に犯人だとして、どうして自ら通報したのか?」
 等々、疑問はいくらでも湧いてくる。資料が少ないだけに想像力がかき立てられる事件である。

(2008年10月12日/岸田裁月) 


参考文献

『殺人紳士録』J・H・H・ゴート&ロビン・オーデル著(中央アート出版社)
『世界犯罪クロニクル』マーティン・ファイドー著(ワールドフォトプレス)


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