アーノルド・ソーディマン
Arnold Karl Sodeman (オーストラリア)



アーノルド・ソーディマン

 アーノルド・ソーディマンは、ほぼ同時期の連続殺人犯、ペーター・キュルテンに似ている。家に帰れば良き夫で、良き父で、職場での評判も悪くない。近隣からも真面目な人だと思われていた。しかし、その過去を遡ると窃盗や偽造の前科がある。普段は猫を被っている「ジキルとハイド」型の殺人者だ。

 彼の犯行はいつも同じだ。場所はメルボルン周辺。狙うのは少女である。しかし、強姦はしない。猿ぐつわを噛まして絞殺するのだ。
 最初の犠牲者はミーナ・グリフィス(12)だとされている。公園で目撃されたのを最後に行方不明となり、2日後の1930年11月8日、公園から10kmほど離れた廃屋で無惨な姿で発見された。
 明けて1931年1月10日、オーモンド郊外の荒れ地で、ヘイゼル・ウィルソン(16)の遺体が発見された。

 その後、ソーディマンは4年に渡って沈黙する。良心の呵責だろうか? それとも逮捕を恐れたのだろうか? いずれにしても、快楽殺人の誘惑には勝てなかったようだ。1935年1月1日、海辺の保養地インヴァーロックで、エセル・ベルショー(12)が犠牲になった。
 同年12月2日には6歳のジューン・ラッシュマーが犠牲になった。目撃者によれば、彼女は自転車に乗った男に連れ去られたとのことだった。

 現場付近の建築現場では、昼休みに事件の話題で持ち切りになった。或る男が冗談で云った。
「なあ、アーノルド。あの日、お前があの辺りで自転車に乗っているのを見たような気がするんだが、ありゃ見間違いだったかな?」
 するとその男はそれまでの笑顔を歪ませて、ガクガクガクと震えたかと思うと、マグカップを投げつけて叫んだ。
「バカ云うな! 見るわけないじゃないか!」
 この男がソーディマンだった。
 当初はポカ〜ンとしていた仕事仲間は、やがて我に返って「あの言動はどう考えても怪しいよ」。かくして警察に通報されたソーディマンはお縄となった次第である。

 全てを自供したソーディマンは、裁判では精神異常を主張した。しかし、認められずに有罪を宣告されて、1936年6月1日に絞首刑に処された。

(2007年10月28日/岸田裁月) 


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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