ヴァージニア・クリスチャン
Virginia Christian (アメリカ)



ヴァージニア・クリスチャン

 1912年3月12日、ヴァージニア州ハンプトンでの出来事である。72歳の未亡人、アイダ・ベローテの遺体が自宅の居間で発見された。箒の柄で喉の奥を突かれた上、タオルを口中に押し込められていたという。直接の死因は窒息だった。

 間もなく黒人の使用人、ヴァージニア・クリスチャン(17)が容疑者として逮捕された。彼女の供述によれば、事のあらましは以下の通り。

「私はベローテ夫人に呼ばれました。そして、いきなり怒鳴られました。
『あんた、金のロケットを盗んだわね!』
 私は否定しました。でも、夫人は信じてくれませんでした。
『スカートもなくなってるわ! あんたが盗んだに違いないわ!』
 そして、こう云うのです。
『返さないなら、あんたを刑務所に入れてやるから!』
 私は頭にきて、こう云い返しました。
『もし私が盗んだのだとしても、あんたには返さないわ!』
 すると、夫人は壷を掴んで、私の頭を殴りました。壷は粉々に砕けました。私は箒を手に取り、柄で応戦しました。私が喉を突くと、夫人は倒れました。うめき声を上げているので、口の中にタオルを押し込んで黙らせました」

 状況証拠は彼女の供述の通りだった。故に彼女の犯行と見て間違いないのだろう。しかし、有罪だとしても、問題は量刑である。17歳の彼女に死刑判決を下していいものだろうか? せめて終身刑が妥当なのではないだろうか?
 ところが、法廷は躊躇することなく死刑判決を下した。土地柄を考慮すれば已むを得ない判決だったのだろう。バージニア州は南北戦争では南部連合に属していたのだ。「黒人が白人のご主人様に楯突くなどもってのほか」という風潮が支配的だったのである。

 かくして、ヴァージニア・クリスチャンは1912年8月16日、電気椅子により処刑された。彼女は現在に至るも、アメリカで電気椅子により処刑された唯一の未成年女性である。

 なお、彼女の遺体は親元に引き取られることなく、州立医科大学に献体された。リッチモンドの刑務所から遺体を移送する費用を両親が捻出できなかったからだ。思えば、彼女は貧困ゆえに17歳で働いていたのである。後味の悪いエピソードである。

(2011年12月10日/岸田裁月) 


参考資料

http://en.wikipedia.org/wiki/Virginia_Christian
http://www.rowdiva.com/Virginia.html


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