ジョン・デヴィッド
John David (イギリス)


 

 豚は何でもよく食べるという。故に「世間を騒がせたいくつかの殺人事件で中心的な役割を果たした」とは英国の犯罪研究家ブライアン・レーンの弁。代表的な例としてジョセフ・ブリゲンホセイン兄弟のケースが挙げられる。そして、ジョン・デヴィッドもまた豚を死体処理法として選んだために、犯罪史に名を残すことになった。ただ殺しただけならば、とっくに忘れ去られていたことだろう。

 被害者の名前はミリアム・ジョーンズ(24)。事件当時、ロンドン近郊メイデンヘッドのバーで働いていたわけだが、そのバーに入り浸っていたのが加害者たるジョン・デヴィッド(25)。ヘルズ・エンジェルのメンバーになることに憧れるバイク修理工だった。

 1987年4月8日、ミリアム・ジョーンズが行方不明になった。そして、4月12日、メイデンヘッドの養豚場で「元ミリアム・ジョーンズ」と思われる残骸が発見された。それは無数の骨片だった。
 検察官のニコラス・バーネル曰く、
「養豚場には100頭余りの豚がいました。奴らは何でも食べます。肉も、衣類も、骨も、何ひとつ残さずに」
 但し、衣類の切れ端は残されていて、被害者の母親によりミリアム・ジョーンズのものと確認された。

 ジョン・デヴィッドの供述によれば、被害者とはしばらく交際していたが、4月の初めに別れ話を切り出された。別居中の夫とやり直したいと告げられたのだ。カッとなったデヴィッドは、4月8日の晩に被害者の部屋に忍び込み、強姦した後に絞殺した。そして、遺体を毛布でくるんで養豚場まで運び、ガソリンをかけて火を放ち、後始末を豚に任せたのである。人里離れた場所でないと出来ない芸当だが、デヴィッドは以前、この養豚場に勤めていたので、土地勘があったのだ。
 かくしてジョン・デヴィッドは殺人の容疑で有罪となり、終身刑を宣告された。

 なお、デヴィッドは1984年にもう一人の女性を殺害していたことが発覚している。クリスマスの直前にジャクリーン・チアー(22)がメイデンヘッドの自宅で遺体となって発見されたのだが、彼女もまたジョン・デヴィッドとつきあっていたのだ。死因はミリアム同様に絞殺だった。ところが、杜撰な捜査により「ウィルス感染に基づく窒息死」として片付けられてしまった。この件でデヴィッドが裁かれていればミリアム・ジョーンズは殺されずに済んだのでは…と思うと残念でならない。

(2009年11月4日/岸田裁月) 


参考文献

『死体処理法』ブライアン・レーン著(二見書房)


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