ロベルト・ストゥルゲンス
Robert Wilhelm Stuellgens (西ドイツ)


 1980年6月12日、デュッセルドルフ警察は或るアパートの住人からの通報を受けた。2日前から隣人の姿が見えないというのだ。
「お隣のデックさんには幼い子が2人もいるので、こんなに静かな筈がありません。何処かに出掛けるという話も聞いてません。心配なので調べて頂けないでしょうか」
 早速、現地に赴いた巡査は、3つの遺体に出くわして仰天した次第である。

 マルグレット・デック
 トマス・デック(2)
 クリスチャン・デック(生後6週間)

 母親たるマルグレットは全裸で、半ば乾きかけた血の海の中で倒れていた。部屋の反対側ではトマスの無惨な亡骸が。クリスチャンは隣の部屋のベッドの中で冷たくなっていた。死因はいずれも刺殺である。
 主たるヴィルヘルム・デックの姿は何処にもなかった。

 現場を調べた捜査官は、犯人は犯行後に浴室で身体を洗い、衣服を着替えていることを突き止めた。血まみれの服はクロゼットの中に掛けられていた。また、ベッドには犯人が仮眠を取ったと思われる痕跡も残されていた。このことはすなわち、夫が犯人ではないならば、彼もまた殺されている可能性が高いことを意味していた。何故なら、犯人は夫に邪魔されないことを予め知っていたからだ。
 検視解剖によれば、マルグレットは強姦された上にオーラル・セックスを強要されていたとのこと。夫の犯行である可能性は低くなった。おそらく彼女に横恋慕する者の犯行だろう。

 間もなくマルグレットの友人から有力な情報が寄せられた。
「あれは10日ほど前のことでした。マルガレットから『家具を売りたい人がいるから見に行かない?』と誘われたんです。それは同じアパートに住む独身男性で、部屋を引っ越すから家具を買って欲しいと云うんです。マルガレットは何も買いませんでしたが、私は冷蔵庫を買いました。その時に感じたんですが、男はマルガレットをジロジロとイヤラしい眼で見ていたんです」
 その男がロベルト・ストゥルゲンス(30)だった。捜査官は早速、事情聴取に出向くも返事がない。已むなくドアを蹴破ると、そこにはヴィルヘルム・デックの遺体が横たわっていた。彼もまた同じ凶器で刺し殺されていた。

 ストゥルゲンスは数ケ月前に刑務所から釈放されたばかりの男だった。1973年に公園で若い母親を犯し、その幼な子までも陵辱したかどで6年間服役していた男だったのだ。
 直ちに全国指名手配されたストゥルゲンスは、ほどなくして母親が住むエッセンで逮捕された。その口が語った犯行の一部始終は以下の通り。

「彼女を一目見て、どうしても犯りたいと思いました。そこでまず夫が帰るのを待って、家具を運ぶのを手伝って欲しいと頼みました。彼が部屋に入るや否や心臓を刺しました。即死でした。その後、彼から鍵を奪って室内に入り、彼女と子供たちが帰るのを待ちました。結果は御覧の通りです」

 かくしてストゥルゲンスには終身刑が宣告された。この男が二度と釈放されないことをただただ願うばかりである。

(2009年5月3日/岸田裁月) 


参考文献

『現代殺人百科』コリン・ウィルソン著(青土社)
『THE ENCYCLOPEDIA OF MASS MURDER』BRIAN LANE & WILFRED GREGG(HEADLINE)


counter

BACK