ウィリアム・フィッシュ
William Fish (イギリス)



 1876年3月26日、イングランド北西部の都市、ブラックバーンにおいて、エミリー・ホランド(7)が学校からの帰宅途中に行方不明になった。警察や近所の人々が総出で付近一帯を捜索したが、彼女の姿を見つけることは出来なかった。
 2日後の3月28日、新聞紙に包まれたエミリーの胴体と両脚がそれぞれ異なる場所で発見された。彼女は強姦された後、剃刀で喉を切り裂かれ、バラバラに切断されたようだ。なんとも痛ましい限りである。

 検視を担当した医師は奇妙なことに気づいた。胴体にいくつもの髪の毛が付着しているのだが、いずれも短く、太さや色がまちまちなのだ。どうしてこんなものが付着しているのだろうか?
 あっ。床屋だ床屋。犯人は床屋に違いない。
 かくしてエミリーの通学路にある床屋の店主、ウィリアム・フィッシュ(26)が容疑者として浮上したのである。

 直ちに家宅捜索が行われたが、不審なものは何も見つからなかった。しょぼくれていると、リチャード・テイラーという男が警察署に犬を連れて訪れて、
「うちの飼い犬を捜査に使って下さい。ブラッドハウンドという種で、とても鼻が効きます。必ず捜査に役立つことでしょう」
 おお、それは有り難い、早速、使わせて頂きます、と犬を伴っての再捜索が行われた。
 くんくんくん。
 何かを嗅ぎつけたその犬は、やがて暖炉に顔を向けて、けたたましく吠え始めた。こりゃ何かあるぞと中を覗くと、煙突の中から焦げた頭と両手が発見された。
それはエミリー・ホランドの残りの部分に間違いなかった。

 観念したウィリアム・フィッシュは犯行を認め、すべてを告白した。
「あれは午後5時過ぎのことでした。私が店の前に立っていると、あの子が通り過ぎました。私は彼女を呼び止めて、コックスの店で煙草を買って来てくれないかと頼みました。彼女は快諾し、煙草を買って来てくれました。私は店に入らないかと誘いました。彼女は従いました。そして、2人で2階に行きました。そこで彼女を犯し、喉を剃刀で切り裂きました。その後、私は遺体を1階の仕事場に運び、バラバラに切断しました」
 犯行の手順は検視官が推理した通りだった。

 かくして、死刑を宣告されたウィリアム・フィッシュは、1876年8月14日に絞首刑により処刑された。
 ちなみに、本件は犬が解決した最初の事件として知られている。これ以降、ブラッドハウンドは警察犬として重宝されることになる。

(2012年10月10日/岸田裁月) 


参考資料

http://www.murder-uk.com/
http://www.cottontown.org/page.cfm?language=eng&pageID=2954
http://www.truecrimelibrary.com/crime_series_show.php?id=389&series_number=3
http://www.britishexecutions.co.uk/execution-content.php?key=1175


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