ロナルド・ジェブソン
Ronald Jebson
a.k.a. The Babes in the Wood (イギリス)



スーザン・ブラッチフォード(左)
ゲイリー・ハンロン(右)

 1970年3月31日、ロンドンの北10kmほどの住宅地、エンフィールドでスーザン・ブラッチフォート(11)とゲイリー・ハンロン(12)が行方不明になった。手をつないで遊びに出掛けたのが午後4時30分。以来、夕食時になっても帰って来ない。こんなことは初めてだ。心配した両親は午後8時に警察に通報した。

 捜索には600人の警官が動員され、1万5千人もの住民が尋問された。 しかし、それでも2人の行方は判らなかった。あたかも神隠しにあったかのように消えてしまったのだ。

 2ケ月半後の6月17日、エンフィールドから5kmほど東に離れたエッピング・フォレストの森の中で、互いの腰に手を当てて寄り添う2人の遺体が発見された。腐敗がかなり進行しており、死因を特定することが出来ない。彼らは道に迷った末に衰弱死したのだろうか? 否。そうとは思えない。スーザンは衣服は身につけてたが、下着が奪われていたのだ。何者かに殺害された後に「戦利品」とした奪われたと見るのが筋だろう。

 事件はマスコミにより「The Babes in the Wood」と命名され、連日のように報道されたが、解決の糸口は全く見えなかった。目撃者が皆無に等しかったのだ。彼らがどうやってエッピング・フォレストに辿り着いたのか、そして、如何にして殺害されたのか、手掛かりがまるで掴めなかったのである。

 時は流れて26年後の1996年、或る囚人がこんなことを云い出した。
「俺はあの事件の犯人を知ってるぜ。殺ったのはロバート・パッパーだ。間違いない」
 その囚人とは、22年前にロバート・パッパーの8歳の娘を殺害した容疑で有罪となり、終身刑を宣告されていたロナルド・ジェブソンだった。彼は小児性愛者で、それまでにも児童をイタズラして何度も投獄されている。むしろ、こいつの仕業と見るべきだろう。取り調べを重ねるうちに、ジェブソンは遂に己れの犯行であることを認めた。1998年のことである。



ロナルド・ジェブソン(1974年当時)


現場検証に立ち会うジェブソン(右)

 ロナルド・ジェブソンは1939年、ハーパーという姓の女性の私生児として生まれた。母親は我が子を育てることが嫌になり、ジェブソン家に養子に出した。養親との折り合いが悪かった彼は、しばらくは「ロナルド・ハーパー」と名乗っていたが、児童への性犯罪を犯してからは「ロナルド・ジェブソン」と名乗るようになった。養親への当てつけなのだそうだ。全くひねくれた男である。

 とにかく問題の多い男だった。小児性愛者だっただけでなく、アルコールとアンフェタミンの中毒患者だった。1958年と1960年の二度に渡って軍に入隊しているが、そのたびにトラブルを起こして除隊させられている。前述の如く、児童へのイタズラを繰り返し、1968年には6歳の少女を性的に虐待した容疑で有罪となり、2年の刑を云い渡されていた。仮釈放されたのは1970年3月2日。スーザン・ブラッチフォートとゲイリー・ハンロンが行方不明になる29日前のことだった。

 仮釈放後のジェブソンが身を寄せたのが、エッピング・フォレストに住む幼馴染みのロバート・パッパーの家だった。そして、3月31日にスーザン・ブラッチフォートとゲイリー・ハンロンを車に誘い込み、森の中でそれぞれを犯した挙げ句に殺害した。
 その4日後の4月4日、ジェブソンは11歳の少年を性的に虐待した容疑で逮捕されて有罪となり、5年の刑が云い渡された。つまり、彼は「The Babes in the Wood」の事件が大々的に報じられる頃には獄中にいたので、容疑者として浮上しなかったのである。

 3年後の1973年に仮釈放されたジェブソンは、再びロバート・パッパーの家に身を寄せる。しかし、彼の前科が前科である。幼い娘がいる身としては居着いて欲しくない人物だ。間もなくパッパーはジェブソンに立ち退きを要求する。その際にジェブソンはこのように罵ったという。
「お前らに復讐してやるからな!」
 ローズマリー・パッパー(8)が強姦された挙げ句に絞殺されたのは、その翌日のことだった。ジェブソンはそのまた翌日に逮捕され、終身刑を宣告されたわけだが、彼のロバート・パッパーへの恨みたるや凄まじく、22年後に彼を貶めるために「あいつが『The Babes in the Wood』の犯人」と申告したのである。

 2000年に更に2件の終身刑を追加されたロナルド・ジェブソンは、完全な異常者であったが、意外に常識人でもあった。霊の存在を信じていたのだ。現場検証に立ち会う彼は、これ以上は進めないと捜査官に訴えた。
「霊がいる。ダメだよ。ここには入れないよ」
 心霊関係に懐疑的な筆者は霊の存在は信じないが、殺人者は霊の存在に脅えればいいと思う。脅えて、脅えて、脅えて、そして、己れの所業の重さに踏み潰されて、地獄に行けばいいと思う。人を殺せば地獄に行く。無限の試練が死後に待っている。

(2012年3月30日/岸田裁月) 


参考資料

http://en.wikipedia.org/wiki/Babes_in_the_Wood_murders_(Epping_Forest)
http://www.murderuk.com/child_killers_ronald_jebson.html
http://www.murderpedia.org/male.J/j/jebson-ronald.htm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/741689.stm


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