第30話 「夜の街へと繰り出そう」

「一体どうしたって言うんだ〜辰〜」
 ちんぽこの辰五郎のオッパイは、CカップからDカップぐらいに膨らんでいた。いわゆる揉みごろのサイズである。実際むしゃぶろうが揉んでみると、実に良い揉み心地であったし、目をつぶっていると若い女性のものと思える感触や弾力を楽しむことが出来た。少し調子に乗ったむしゃぶろうは舌も使ってみようと思った。そして顔を胸に近づけ、乳首に唇を当てた。とその時、ぷ〜んとおやじのにおいが鼻を突いた。
「お〜い、辰〜」
「何ですか兄さ〜ん」
「お前の胸、形はすっかり変わっちまってるけど、においはそのままなんだなあ〜」
「あ〜そこまでは気がつきませんでしたけどねえ。ああ、そうですか」
「臭いよ、おまえ。おやじ臭い」
「ご不満ですか?」
「当たりめえだろ」
 むしゃぶろうは三尺ばかり辰五郎から離れた。
「そんなことよりねえ、兄さん。どうにか元に戻りませんかねえ。これじゃ格好悪くて表に出れないっすよ」
「元に戻るこたあねえだろ。しばらくはそのままにしておけよ。面白しれえから」
「他人事だと思って、気楽なこと言ってらあ。あっしゃあ、本当にショックで、もう、もう、生きていけねえよ」
 辰にとって見ればもっとものことで、どうにも弱った事態である。胸が女になったのなら、いっそのこと「転校生」みたいに全部女になってしまえばそれなりに楽しみもあろうが、辰の場合は胸だけ女で、あとはおっさんのままなのだ。顔もいかつけりゃすね毛も濃い。声も野太いし、玉も竿も付いている。
「これじゃあまるで手術途中のニューハーフだよ」
「ニューハーフを馬鹿にするんじゃねえ。立派に生きてる人もいっぱいいるし、オカマバーかなんかで働けば結構いい金になるって言うぜ」
「でもさあ、あの人たちは気持ちは女なわけでしょ。俺気持ちは男だもん。ただ胸が膨れちゃっただけなんだもん。オカマじゃないもん」
 辰五郎はベソをかきはじめた。
「ええい、めそめそするな。女の腐ったみたいに。前向きに考えろ」
「どうやって」
「いいから俺の言うとおりにしろ。いい考えが思いついたんだ。さあ、町に出るぞ〜」

つづく