電撃フリントGO!GO作戦
OUR MAN FLINT

米 1966年 107分
監督 ダニエル・マン
原作 ハル・フィンバーグ
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ジェームズ・コバーン
   リー・J・コッブ
   ギラ・ゴラン
   エドワード・マルヘア
   ジェームズ・ブローリン


 云うまでもないが、『オースティン・パワーズ』の元ネタとなった映画の一つである。
 007のバッタもんはそれこそ星の数ほどあるが、中でも最も金をかけていて、最も面白いのがこの「電撃フリント」のシリーズだ。しかし、フリントがあまりにも超人に描かれているので、もはや笑いなしには見ることができない。

 フリントは空手やフェンシングの先生で、その上バレエ(球技の方ではない)も一流で、ボリショイ・バレエ団でも教鞭を取るナイス・ガイ。時計が間違っていることに気づき、
「おっと、ロシア時間だった」
 などとさりげなく自慢するのが玉に傷だ。上司が007も携帯したアタッシュケースを渡そうとすると、
「私の趣味には合わない」
 と、おもむろにポケットからライターを出して、
「これの機能は82種類。ライターとして使えば83種類だ」
 などとQを挑発する行為に出る。どうやら007を目の敵にしているようだ。
(事実、彼は0008というショーン・コネリー似のスパイをボコボコにする)。
 ちなみに、彼には同居する愛人が4人もいる。あちらの方でも007には負けていない。


 料理に対する審美眼も驚異的で、指紋に残されていた成分から、その指紋の持ち主がマルセイユのブイヤベースを24時間以内に食べていたことを突き止める。上司がマルセイユ行きの便を手配しようとすると、
「いや、自家用機で行く」
 本当に嫌味なフリントだ。
 マルセイユでブイヤベースを喰いまくり、この味だという店を発見した彼は、例のライターで上司に連絡。
「罠にハマることにする」
 そして、罠にはまって金庫に閉じ込められると、ヨガの心得でもって心臓を止めて、死んだとみせかけて敵のアジトに侵入するのである。

 無敵である。強くて、頭が良くて、女にもてて、金がある。その上に自由に死ぬこともできる。完璧である。
 しかし、007の面白さは、彼が時として見せる「人間らしさ」の部分なのである。いい女を見かけて、ハントしようと思ったが、任務中であることに気がついて、
「忍耐だ。ボンド、忍耐だ」
 などと自分に云い聞かせる生身の姿があってこそ、彼の超人的な活躍が生きてくるのだ。
「電撃フリント」がたった2作で終わったのは、彼が完璧すぎたからであろう。


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電撃フリント・アタック作戦


 

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