メイ・ウェスト
MAE WEST
(1893-1980)

《主な出演作》
*夜毎来る女(1932)
*わたしは別よ(1933)
*妾は天使ぢゃない(1933)
*罪ぢゃないわよ(1934)
*わたし貴婦人よ(1935)
*美しき野獣(1936)
*マイラ(1970)
*結婚狂奏曲セクステット(1978)


 

 クララ・ボウに代わってパラマウントが売り出したのが、このメイ・ウェストである。
 彼女はこれまでにないタイプの女優だ。いわゆる「セックスシンボル」というのではない。なにしろ銀幕デビューが39歳というおばさんなのだ。にもかかわらず、過激なセックスを売り物にした。

「あら、あなたのポケットの中で膨らんでいるのは拳銃?。それとも、あたしに会えてうれしいのかしら?」

 こんな意味深な言葉で男どもをたぶらかすのだ。

 元々は売れない舞台女優だった彼女が初めて注目されたのは1926年、そのものずばり『セックス』という自作の舞台をブロードウェイで上演した時のことだ。まるで芽が出ないので、やけっぱちになっていたのだろう。娼婦たちの日常を描いたこの舞台には、下品な言葉や卑猥なスラングがふんだんに使われていた。当然の如く公然猥褻罪でお縄となるが、興行は大成功を修めた。
 次に手がけたのが『『女装(THE DRAG)』。ホモセクシャルをテーマにした、当時としては画期的な作品だった。
 続く『ダイヤモンド・リル』が作品的にも興行的にも成功を修め、有名女優の仲間入りを果たしたメイは、いよいよハリウッドに招かれることになる。
 やけっぱちでSMの女王様をやったら売れたお笑い芸人のようである。人間諦めないことが肝心だ。

 この新しいタイプの卑猥な女優は瞬くうちに人気者となった。しかし、モダンに馴染めないゴシックな人々からは大顰蹙を買った。『罪ぢゃないわよ』の広告がブロードウェイにでかでかと飾られると、教会関係者の一団がプラカードを掲げて猛抗議した。
「いいや。罪だ!」
 彼女の素敵な台詞はヘイズ倫理委員会に大幅に削られた。もう映画では自分の良さは伝わらない。そう悟ったメイは舞台へと戻っていった。


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