Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男
THE THING WITH TWO HEADS

米 1972年 85分
監督 リー・フロスト
特撮 リック・ベイカー
出演 レイ・ミランド
   ロッシー・グリア
   ロジャー・ベリー
   ドン・マーシャル


「双頭もの」というジャンルがあるとするならば、本作が間違いなく代表作であろう。しかし、その内容はハチャメチャなので、本作をマトモに評価する者は皆無である。

 臓器移植の世界的権威が主人公。演じるのはレイ・ミランド。アル中映画の傑作『失われた週末』の名優だが、変な映画にばかり出ているのが玉に傷。あの『吸血の群れ』にも出ていたりして最後に蛙に喰われるが、まあ、それはともかく、このミランド先生がガンを患う。余命幾許もない。そこで「私のこの優秀な頭脳を医学のために残したい」とかなんとか云って、物凄いことを考える。健康な人の肩に自分の頭を移植して、馴染んできたら本体の頭をもぎ取って、自分がその体を乗っ取ってしまおうというのである。そして、死刑囚から志願者を募ってこの暴挙を遂行せんとする。
 手術は無事に成功したが、麻酔から覚めた二人は仰天した。ミランド先生は「どうしてクロンボになんか植えつけたんだ」と大剣幕。黒人男も「こんな話、聞いてねえよ」と暴れ出し、病院を脱走してしまう。


 さて、このあたりで映画は、今までの怪奇映画のノリから唐突に黒人映画にシフトチェンジしてしまう。音楽もファンキーに様変わり。しかも、この間抜けな双頭男(二人羽織り状態)がブラックヒーローばりにハーレーに跨がりカー・チェイスを繰り広げたりする。これには本当に驚いた。前半と後半の印象がこれほど違う映画も珍しい。
 結局、最後にはブラックパワーが勝利して、ミランド先生の生首が捨てられて、ゴロンと転がった絵でチョン。いやあ、70年代にはこういう馬鹿な映画が存在したのだ。

 70年代のブラックスプロイテーション全盛時代には、本作のような既成の怪奇映画の主人公を黒人にしただけの珍作怪作が続出した。例えば『吸血鬼ブラキュラ』『ブラッケンシュタイン』『ドクター・ジキル&ミスター・ブラック』など。しかし、奇想天外な面白さという観点からは本作が一番である。


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