世界女族物語
LA DONNA NEL MONDO

伊 1962年 95分
監督 グァルティエロ・ヤコペッティ
撮影 アントニオ・クリマティ
音楽 リズ・オルトラーニ



日本の性教育は素晴らしい

世界残酷物語』の空前のヒットを受けて急遽製作された姉妹編。前作の没フィルムを再編集した廃物利用品だが、なかなか楽しめる作品に仕上がっている。
 しかし、例によって「やらせ」と「差別」は盛り沢山だ。

 まず、眼を引くのがタヒチの映像。
 タヒチの女はみな子供の頃からタムレ・ダンスを習っており、そのダンスの技を駆使して米兵を悩殺、生計を立てている.....というタヒチの女オール売春婦の扱いには唖然とさせられる。これは日本の女はみな芸者だと云われているようなものだ。しかも、ヤコペッティは、女たちが産み落とした様々な人種の「父なし子」たちを映し出すというダメ押しをする。ヤコペッティの民族蔑視、女性蔑視は歴然だ。

 ヤコペッティの偏った視線は、当然に日本にも飛び火する。
 まず、熱海あたりのヌード撮影小屋を取材した彼は、
「日本には裸が溢れ、良心の呵責なく裸を見ることができるのです」
 とコメントして、浅草六区を映し出す。それはフランス座やロック座がある一角で、日本で裸の看板が最も多かった場所だ。にも拘わらず、これがさも「日本の平均的風景」であるが如くコメントする。そして、そのような「裸に寛容な文化」は「日本の進んだ性教育」に由来するとして、中学生の性教育現場を映し出すのだ。
「日本ではこのような授業が3年間、週2回行われます」
 あのなあ、オッサン。俺が性教育の授業を受けたのは、小学6年生の時に、たったの1回きりだ。3年間、毎週2回のプログラムなら、アナル・セックスまで教えてもお釣がくると思うんだけどなあ。



日本のマナー教室は素晴らしい

「しかし、この性教育が裏目に出ました。日本に駐留する2万人もの米兵との間に、何万人もの子供たちが産み落とされたのです。子供たちは洋服を着て英語を話します。日本の古い風習は失われましたが、子供に聖なる湧き水を飲ませる風習だけはまだ残っているようです。それはサムライが出陣の前に身を浄めるために口にした水です」
 画面に映るのは、ごく普通の子供(明らかに混血ではない)が神社の湧き水を飲むだけの風景だ。それだけのものをここまで拡大解釈して膨らませたヤコペッティの手腕はただものではない。
 で、その後、唐突にカクテル教室を映し出して、
「しかし、アメリカのサムライたちは別のものを飲みます。カクテルです。そこで日本人もカクテルの作り方を学びます」。
 国辱とはまさにこのことである。



日本の美容整形は素晴らしい

 以上から判る通り、ヤコペッティの手法は、一部の特殊な事例を取り上げて、それをあたかもその国の平均的な風習として紹介してしまうのである。その一刀両断の切り口が鮮やかだったからこそ、彼のフィルムは大当たりしたのだが、反面で、「映画史の恥部」として知識人から無視され続けている由縁でもある。
 ヤコペッティを師と仰ぐ私でさえも、本作は少々「ヤリすぎ=差別的すぎ」であると思った。
 さて、諸君はどのように思われるであろうか?。
 国辱的な日本の映像が満載の本作を、是非とも見て、各自討論して戴きたい。


関連人物

グァルティエロ・ヤコペッティ(GUALTIERO JACOPETTI)


 

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