超常現象の世界
JOURNEY INTO THE BEYOND

西独 1975年 90分
監督 ロルフ・オルセン


 超常現象(主にサイキック系)ばかりを集めた「モンド映画」の変化球である。
 今、気づいたのだが、この日本版ビデオの解説を書いているのはなんと、故青山正明氏であった。氏に敬意を表する意味で、全文紹介しよう。(手抜きと云うなかれ)。

《1976年に公開され、大変な反響を呼んだ『超常現象の世界』が遂にビデオ化された。この映画に収録されている超常現象の数々は、ソ連の公開念動実験、コズミックパワーを用いた小児麻痺の治療(イタリア)、素手による外科手術(フィリプン)等、とりわけ圧巻なのは、西アフリカの祈祷師が見せる空中浮揚である。浮揚時間65秒、地面に描かれた火の輪の中で、彼はユラリユラリと宙に浮き、何と2メートルの高さにまで達したのだ。
 また、ブラジルはブードゥ教の呪いの実験もすさまじい。呪術師が儀式を終えるや、呪いの犠牲者である婦人を取材、激痛に喘ぐ彼女の腕をX線撮影すると、何本もの針が骨に突き刺さっていた!。切開して、体内から針を抜き取るところまでカメラに収められており、これには只々、呆然とするばかり。
 世界各国を廻って、科学者の立会いの下、5万メートルものフィルムを撮影。更に、貴重な記録フィルムを加えた本作は、さながら超常現象の一大エンサイクロペディア。驚異、衝撃、戦慄、残酷。この類稀なるドキュメンタリーは、必ずや、あなたに新たなる地平を垣間見せてくれるはずだ》

 で、問題の「空中浮揚」であるが、たしかに初見の当時は驚いたもんだが、麻原彰晃を経験した今となっては、かなりインチキ臭い。まず、夜でなければ浮揚できないというのがなんとも頼りない。背中のワイヤーを見せないためだと思われても仕方がない。撮影隊はトリックがないことを証明するために、祈祷師を横からも撮影するが、もう1台のカメラが撮らえたその映像は上半身と足ばかりで、肝心の背中を見せてくれない。むしろ、背中を撮影しないように注意しているかのように見える。

「ブードゥ教の呪い」も随分と驚いたが、これもやらせにしか見えない。犠牲者の婦人は老婆で、その左腕はシワシワなのだが、針が摘出された右腕はツヤツヤなのだ。特撮だと考えれば、すべてにおいて合点がいく。

 この他にも、ガーナの「心霊白内障手術」が痛々しいが、これもどう見ても手品である。
 それから「フィリピンの聖書信仰外科医」。聖書さえ信仰していれば、麻酔も消毒もいらないと主張して、ズサンに患部を切り裂くのだが、これは単に非衛生なモグリの医者にすぎない。

 初見の当時(小学生)は「新たな地平を垣間見せてくれ」た筈だった。しかし、眼の肥えた今見ると丸出ダメ夫。インチキ超能力の資料としては価値大なのだが。


 

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