プリズン
PRISON

米 1987年 103分
製作総指揮 チャールズ・バンド
監督 レニー・ハーリン
出演 ヴィゴー・モーテンセン
   レイン・スミス
   チェルシー・フィールド
   アンドレ・ド・シールズ


『カットスロート・アイランド』で悪名高きレニー・ハーリンのハリウッド進出第1弾である。この後、『エルム街の悪夢4』『ダイハード2』『クリフハンガー』と続くが、彼のピークはここまで。以降は下る一方である。
 しかし、本作を改めて観ると、やはり才能があったんだなあと感心させられる。破綻の多い月並みなプロットを手堅くまとめ、すこぶる面白い作品に仕上げている。本作のヒット以降、類似の作品が数多く製作されたが、越えるものは一つもない。やはりハーリンの演出力が飛び抜けていたのであろう。

 物語は極めて単純だ。
 20年前に閉鎖された刑務所が再開された。この刑務所ではかつて無実の罪を着せられた囚人が処刑されていた。その怨霊が再開と同時に長い眠りから目覚め、囚人や看守たちを呪い殺すのであった.....。
 この怨霊が憎いのは無実の罪を着せた所長のみで、その他の人々には何の怨みもない筈なのだが、どういうわけかこいつは直接所長には行かずに、無関係な人々を殺しまくる。まあ、そうじゃないと話が面白くならないのは判るが、プロットとしては破綻している。四谷怪談で云えば、お岩さんが伊右衛門のところに行かずに、ご町内の住人を取り殺すようなものだからね。
 しかし、そんな破綻もたいして気にならないのは、ひとえにハーリンの演出力の賜物である。綻びが露見しそうになるとスピーディーにちゃっちゃと進めて、観客を深く考えさせないように心掛けている。
 そして、囚人たちのキャラを立たせて、それぞれを丁寧に描いているために、「囚人VS怨霊」という集団劇の構築に成功している。
「ダメな脚本でも演出次第では面白いものに成り得る」という好例であり、「娯楽映画の教科書」として、是非とも多くの方に参考にして頂きたい1本である。


 

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