マル秘色情めす市場

日活 1974年 83分 パートカラー
監督 田中登
出演 芹明香
   花柳幻舟
   宮下順子
   萩原朔美
   絵沢萠子


 ロマンポルノとして観た場合、この映画は最低である。抜きどころがまるでないからだ。芹明香はいつもマグロ状態でヤル気がなく(そういう役柄)、ハッスルするのは母親役の花柳幻舟ばかり也。ザマス眼鏡のおばちゃんが男に跨がり「ウギャア」と悶えるさまを見せられるこちらとしては堪ったもんじゃない。唯一の勃起要員である筈の宮下順子もその不憫な役柄ゆえに本分を果たせず、しかも、ダッチワイフで爆死という凄惨な最期を迎えるのである。
 ポルノでパートカラーという場合、普通は濡れ場がカラーになる。しかし、この映画では白黒のままである。では、どこがカラーになるかというと、精薄の弟が首吊り自殺する場面なのである。
 いやはや、まったく抜けないポルノであるが、しかし、普通に映画として観た場合、本作は日本映画史に残る傑作であることは間違いない。素晴らし過ぎる。

 何が素晴らしいといって、我が国最大のドヤ、釜ケ崎オールロケを敢行しているのである。これはなかなか出来ることではない。だって怖いもん、あそこ。とにかく、ヤバいことをしでかしちゃった方々が地元を追われて、最後に行き着く先がドヤなわけで、いわば無法者の吹き溜まりである。何が起るか判ったもんじゃない。そんなリスクを敢えて背負って撮影された本作は、ドヤで生まれた女が逞しく生きて行く様を描いた青春群像なのである。

 売女の父なし子として生まれ、ロクに教育を受けることもなく、初潮を迎えるや否や「売り」を始めて、母親に殴られ、ヤクザにボコられ、それでも精薄の弟を養い、オナニーを手伝う。しかし、筆下ろしをしてあげるや否や弟は縊死。その遺体を見上げつつも、
「うちはここで生活するしかあらへんねん」
 そして、通天閣を背にクルクル回る。本当に楽しそうにクルクル回る。この逞しさに心を打たれぬ者は、人ではない。
 本当に素晴らしい映画である。


 

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