キラーバージン
DISEMBODIED

米 1998年 90分
監督 ウィリアム・カースティン
脚本 ウィリアム・カースティン
出演 アナスターシャ・ウールヴァートン
   ハンナ・クーパー
   ジョージ・ランドルフ


 あの駄作『キラー・コンドーム』に肖った邦題の「志の低さ」に腹が立ち、今の今まで放っておいた作品。しかし、「最低映画館」などというものを主催している以上、避けては通れない作品ではないかと思い立ち、いやいやながら借りてきて観て、その面白さに驚いた。

 IMDbで調べると、本作はビデオ作品とされており、しかし、どう見てもビデオ撮りされた作品ではないので、自主製作映画なのだろう。あまりにもユニークだったので、一般上映にまで漕ぎ着けなかったのだ。
 オリジナリティ皆無、すべてどこかで見たことのある映像ばかりだが、それらをツギハギにして、とてつもない奇想を展開している。


 お世辞にも美人とは云えない女が、どうしようもなく汚いホテルに投宿する。
(このホテルの部屋のイメージが『イレイザーヘッド』によく似ている)
 彼女は黒いカバンに脳みそを入れて持ち歩いている。
(これなんかまさに『バスケットケース』のあれだ)
 実は彼女はヴァギナ状の形態をしたエイリアンに寄生されており、持ち歩く脳みそは寄生主たる彼女自身のものだったのだ。
 彼女は様々な箇所にヴァギナを有しており、腹のヴァギナから、後頭部のヴァギナから、そして本当のヴァギナから、ヴァギナ状のエイリアンを産み落す。
(このイメージは『ザ・ブルード』に近い)
 で、右の頬にはペニス状の突起物があり、これが射精して顔面シャワーすると、相手の顔は溶けてしまう。そして、溶かした相手の肉に喰らいつき、出産の栄養にするのである。
 だから「キラーバージン」というよりも「キラーヴァギナ」もしくは「キラーペニス」が正しい。
(ペニス状の突起物のオリジナルはおそらく『ラビッド』であろう)
 しかし、ヴァギナ状のエイリアンは寄生主の無意識、すなわち夢まではコントロールすることができない。寄生主が夢を見ると、その夢が現実化し始める。
(その「現実化した夢」はグロテスクな粘土アニメで映像化されており、これはチェコのシュルレアリスト、ヤン・シュヴァンクマイエルだろう)

 と、マニアックな映画を知っている人ほど楽しめる作りになっている。そういう人は大喜びだが、如何せん、そういう人は世の中にはあまりいない。本作がビデオに直行したのも已むを得ない。


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