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映画《市民ケーン》は、新聞王ケーンが「バラのつぼみ」という謎の言葉を残して臨終するシーンで始まる。 天才オーソン・ウェルズは、監督第一作《市民ケーン》で栄光と挫折を同時に獲得した。何故なのだろうか?。彼は何故、新聞王ハーストを敵に回すという無謀なことを目論んだのであろうか?。この疑問が本章のすべてである。そして、本章はこの疑問にお答えする.しかし、その前に、合衆国最大の俗物、ウィリアム・ランドルフ・ハーストについて触れておかなければならない。 |
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1. 新聞王ハーストの陰謀 父が安値で買った鉱山からたまたま銀が採掘されたために、一夜にして大富豪となったハーストは、とにかく権力欲に憑依かれた男だった。政治的野心も旺盛で、政治家に多額の献金をしてニューヨーク市長の座を狙ったこともあった。しかし、市民はこの傲慢な成金を嫌っていた。市長が民選である限り、彼がその椅子に座れる機会は万に一つもなかった。 ハーストは新聞王国を通じて、アメリカの道徳や政治、ひいては世界情勢までも操ろうとした。彼の新聞においては、インチキは当り前だった。 「誤報でもよい。記事から如何なる結論が引き出せるかだけ考えろ」。 彼は配下の記者に説教した。 「何っ?。写真がないだと?。この馬鹿者がっ。何度云ったら判るんだっ。似たのを載せればいいんだ、似たのをっ」。 |
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