ニコライ・デュマガリエフ
Nikolai Dzhumagaliev (ソビエト連邦)



ニコライ・デュマガリエフ


現場検証に立ち会うデュマガリエフ

「ジャマガリエフ」とも「ズマガリエフ」とも表記されるこの男は、アンドレイ・チカティロと並ぶ「ソビエトが産んだ連続殺人鬼」である。犠牲者の数も50人以上と互角だが、「食人鬼」として見た場合、デュマガリエフの方が一枚上手である。チカティロは変態性欲の延長として食べていたに過ぎないが、デュマガリエフは積極的に調理し、友達に振る舞っていたのだ。

 ニコライ・デュマガリエフが逮捕されたのはまったくの偶然だった。1981年1月、モスクワの寒い晩のことである。ウォッカをしこたま飲んで千鳥足の2人の労働者が「部屋でもう一杯やろう」と宿泊所に帰って来た。6階まで上がるといい匂いがした。煮込みの匂いだ。「つまみに分けてもらおう」と、2人はその匂いがする部屋に入った。台所では大きな鍋がグツグツと煮えている。何を煮ているんだろう? 蓋を取って中を覗いた2人は肝を潰した。女の頭と臓物が煮立っていたのである。
 酔いが一気に醒めた2人は慌てて警察に通報した。10分ほどで現場に駆けつけた警察は、ダンボール箱に詰められた山ほどの人骨を発見した。おいおいマジかよ。常習犯だよ。そこに調味料を買いに出かけていたデュマガリエフが鼻唄まじりで現れた。ヤベっ、サツだ。彼は慌てて逃げ出したが、廊下にいた警官たちに取り押さえられた。

 カザフスタン出身の39歳のこの男は、モスクワに出稼ぎに来ていたのであるが、故郷でも犯行を繰り返していたことを自慢げに告白した。
「女にはモテたよ。だけど、俺に興味があるのはセックスじゃない。食べることなんだ」
 たしかに、彼はアジア系の顔つきだが、なかなかの男前である。
「鍋で煮ていた頭? あれは公園で出会った女のものだ。2人でお茶して、部屋に連れて行った。女はセックスしたがったが、俺は興味がない。殺すと直ぐに調理にかかった。人の肉は日持ちしないからね」
 唖然とする取調官を前に、彼はますます饒舌になった。
「女の喉を掻き切ったら、まず血を飲むんだ。そして、乳房を切り取ってフライにする。これは猪のような味がする。それから部分ごとに切り分けて調理して行くんだ」
 猪を食べたことがないので、どんな味なのか想像もつかない。
「どんな女でも食べるってわけじゃない。売春婦だけさ。売春婦には俺は感じないんだ…。あんな奴らなんか、この世からいなくなるべきなんだ」
 なにやら、売春婦を巡る深いトラウマがありそうだ。
「調理すると、よく同じ階の連中を呼んで御馳走したよ。みんな俺のカザフ料理をうまいと云ってくれた。捕まった日もみんなを呼ぶつもりだったんだ」

 責任能力なしと判断されたデュマガリエフは、ウズベキスタンのタシケントにある精神病院に送られた。ここで8年間、電気ショックを含むあらゆる治療法が施されたが、彼は一向に治らなかった。そして1989年3月、故郷のカザフにある精神病院に移送される途中で脱走した。1991年8月にウズベキスタンのフェルガナで逮捕されたが、その間にも犯行を繰り返していたようである。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)
『食人全書』マルタン・モネスティエ著(原書房)
『カニバリズム』ブライアン・マリナー著(青弓社)
『世界犯罪百科全書』オリヴァー・サイリャックス著(原書房)


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