バンビ、ゴジラに会う
BAMBI MEETS GODZILLA

カナダ 1969年 2分 白黒
監督 マーヴ・ニューランド


 のどかな音楽にあわせて、まずバンビが登場する。そして、30秒ほど観客に愛嬌を振りまいたかと思うと、突如としてゴジラの足が現れて、ズーンとバンビを踏みつぶしてしまう(註1)。それでおしまい。1本の映画と呼ぶにはあまりにも短い、2分ほどのアニメーションである。しかし、その短さゆえに、観る者に多大なる笑いと衝撃をもたらす

 と、ここまで読んで、
「えっ、これってアレに似てない?」
 と思ったあなたには座布団をあげよう。そう。この映画、『空飛ぶモンティパイソン』のオープニングにあまりにも似ているのだ。スーザの『自由の鐘』にあわせてシュールな映像が繰り広げられた後に番組タイトルが登場すると、天から巨大な足が現れて、これを踏みつぶしてしまう、というあの有名なアニメーションだ。そして、小野耕世氏は『バンビ』の方がオリジナルだとしている。

「私がマーヴ・ニューランドに初めて会ったのは、84年のことだった。そのとき彼はいった。ぼくが『バンビ、ゴジラに会う』を作ってから、天から巨大な足が出てきてなにかをつぶしてしまうアニメーションが増えたよ。ほら、『空飛ぶモンティパイソン』に出てきた足も、ぼくの作品のあとに作られている」(註2)

 しかし、『バンビ』の製作年度はIMDbによれば69年。『空飛ぶ』も69年なので、テリー・ギリアムがパクった可能性は低い。
 結局、両者は同時発生した、ということなのだろう。

註1 この「ズーン」はピアノの重低音で表現されており、ビートルズの『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』のパロディになっている。

註2 『WAVE15 〜女王陛下のワンダーランド』所収、小野耕世『モンティパイソンの空飛ぶサーカスとそのアクロバット』より


備考

 本作のパロディとして『バンビの息子、ゴジラに会う(SON OF BAMBI MEETS GODZILLA)』なるCGアニメーションが99年に製作されている。ここで現れるのはエメリッヒ版のイグアナで、しかも、勝つのはバンビの方。作者のエリック・フェルナンデスはこういう形でエメリッヒに抗議しているのだろう。


 

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